住所:広島県
2019年10月~11月に45日間かけ、キリスト教の聖地であるスペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼路800㎞を踏破した丸田浩恵さん(広島県)がお越しくださいました。
丸田さんが巡礼路を歩くきっかけとなったのは、自分自身の経験から始まりました。8年前に観光でスペインを回り、巡礼路のゴールであるサンティアゴを訪れた際に教会のテラスから見下ろした光景が忘れられなかったそうです。それは、ゴールした人々が感極まり、涙を流し抱き合って喜ぶ姿でした。その時、横にいた巡礼路を歩いた若い女性に「あなたも歩いて来たのね」と話しかけられ、自分はまだ歩いていないけれどその輪の中にいたことと、人々の姿が目に焼き付き、帰国した後も心から離れなかったそうです。自分の目で見たその光景は、いつしか丸田さん自身の目標となりました。
それからは、寝ても覚めても、巡礼路を歩くことばかりが頭をよぎり、ウェアを買うときは、巡礼の時なら何が必要だろう、靴ならどんな靴がいいだろう…歩くことに興味を覚え、丸田さんは知らず知らずに巡礼路を歩く準備に入っていました。
準備として歩いた〝道〟は次のとおりです。
- 萩 往還60㎞ (山口県) ※1
- 篠栗88か所巡り(福岡県)
- 熊野古道 (和歌山県)
自分の中で準備が整った2019年10月、丸田さんは夢の実現に向けて日本を出発しました。巡礼の道のりでは、様々な国の方と抜きつ抜かれつ、言葉は通じなくても、巡礼路を歩くという目的が自然とコミュニケーションを生み、〝一期一会〟の連続だったようです。
3分の2くらい歩いたレオンの町で、丸田さんはあまりの足の痛みに薬を求めて薬局に駆け込みました。その時に店員から言われた言葉は、「あなたにあげる薬はないわ」でした。あまりの冷たい言葉に呆然としましたが、店員はその後こう続けました。「あなたに今必要なのは休むことよ。」いつの間にか歩くことに集中しすぎて、体を休めることを忘れていたようです。その店員さんに気付かされ、2日間の休息をとることにしました。その休みの間にゆっくりと教会や街を見て回ることができ、心の栄養を補充できたそうです。
その後も、雨が続いたり心が折れそうになった時、所どころで自分を引っ張り上げてくれる人がいたと、丸田さんはその時のことを思い出し涙を流しながら話してくださいました。ゴールの時は、それまでの悪天候がウソのように、パッと晴れ渡ったそうです。旅が終わった後も、都度都度「あの時」が思い出され、丸田さんの気持ちを豊かにしてくれています。
次の夢は、ポルトガルの首都リスボンからサンティアゴを目指す「ポルトガルの道」600㎞を歩くこと。これまでの〝経験〟は〝技術〟となって、丸田さんのチャレンジを後押ししてくれるでしょう。
丸田さんのお話は、見たことのない世界にひきこんでくださいました。
また続・スペインへの道のお話を楽しみにしています。ありがとうございました!
※1 江戸時代の庶民にとって山陰と山陽を結ぶ「陰陽連絡道」として重要な交通路。