古代メソポタミア文明をはぐくんだティグリス川・ユーフラテス川はバグダット以南で広大な湿地帯(アフワール)を形成している。そこには、2000年近く独自の世界観を持ち、湿地帯にひっそりと暮らすマンダ教徒や4500年前のシュメール文明と変わらない生活様式で暮らすマアダンの人々がいる。
アフワールは、反政府勢力の隠れ家にもなっていたため、当時のフセイン政権はアフワールに流れ込む水を堰き止めて陸地化させた。フセイン政権が崩壊後、地元住民は堰を壊して水を流し込み、湿地帯は半分ほど回復してきた。しかし水がなくなってしまったことで土地を離れた人がいたり、移動手段だった伝統的な舟(タラーデ)を作る職人など伝統的な文化は廃れてきた。
2017年にイラクにあるアフワールの存在を知ってから、治安問題やコロナ禍等の影響で足止めを食いながらも、現地での長期滞在によって、人類最初の文明である古代メソポタミア文明が生まれた場所、アフワールに秘められた謎を解き明かそうとした。足掛け6年にわたる現地調査は、世界史、民族紛争、地政学、歴史文化、SDGsなど様々な角度から捉えた取材と探検となった。高野氏は探検の記録をまとめた『イラク水滸伝』(文藝春秋刊)を2023年に出版、山田氏は同書でイラストを担当した。
【プロフィール】
山田 高司 さん
・1957年4月生まれ
・東京都在住
【プロフィール】
高野 秀行 さん
・1966月10月生まれ
・東京都在住