でも、なんというか…いわゆる「自転車で日本一周している人」という雰囲気ではない。その佇まいが、なんだかとても気になります。
お話を伺うと、とても丁寧に答えてくださいました。
旅のきっかけは、目指していた仕事を病気で断念せざるを得なくなったこと。
そんなとき、自転車で旅をしている人の動画を見て触発されたそうです。
もともと旅行が好き。四国や東北など、まだ行ったことのない場所も、できるだけゆっくり見て回りたい。そして、できるだけ経済的に。
そこで選んだのが、もともと持っていたママチャリでした。
働いてお金を貯め、その一部を親御さんに渡して旅の計画を説明し、理解を得たそうです。
そんなところにも、REXさんの人柄が表れているように感じました。
こうして、2024年6月20日、三重県を出発。
実は、それまで自転車旅もテント泊も経験はなかったそうです。
行きたい場所をブックマークし、それをつないでいくことでルートが出来上がっていったとのこと。
「日本一周は半年くらいで終わると思っていたんですけど、倍くらいかかりました」そう言って、さらりと笑います。
旅の楽しみは、知らない土地の景色や食べ物に出会うこと。
そして、自転車の看板を見て声をかけてもらい、「頑張れ」とエールをもらうこと。
でも、話を聞いていると、食べ物や景色だけではありません。
旅先で出会い、自宅に招いてくれた岩手のご夫婦。食事も宿も世話してくれた長野のラーメン屋さんの店主。鹿児島では、スーパーで出会った人にお風呂に誘われ、そのままご飯に行き、宿まで取ってくれたこともあったそうです。
辛かった出来事を聞くと、こんな話もしてくれました。
自転車のチェーンが切れてしまい、目的地まで30キロほど自転車を押して帰ることになったこと。それでも残り10キロほどのところで、地元の方が軽トラックに乗せてくれ、自転車屋さんまで送ってくれたそうです。
「ピンチのときって、誰かが助けてくれるんだなって思いました」
振り返ると、やはり人の優しさの記憶に行き着くようです。思わぬところで人の温かさに助けられた旅だったと話してくれました。
旅の途中で出会った日本一周の仲間がこの冒険館を訪れていたこともあり、「自分もその仲間に加わりたい」という思いから、ここもルートに組み込んでくださったそうです。
自分の旅路が、少しでも誰かに伝わったら――そんな思いもあったとのこと。
ゴールの三重県までは、あと少し。
旅が終わったら何をするんですか?と聞くと、「とりあえず、しばらくは真面目に生きます」というお答え。
日本一周しても、体感ではまだ日本の50%くらいしか見られていない気がする。だから、いつかもう一周したい。夢は海外にも広がっているそうです。
ただし一つだけ断言していました。
「もうママチャリでは旅しません。人にもママチャリはやめておけって言います(笑)」
自転車旅の経験も、テントを立てた経験もなかった人が、いきなり日本一周という旅をやり遂げようとしている。それなのに、REXさんにはいわゆる「アウトドア」や「自転車旅人」らしい雰囲気があまりありません。
それでも、旅に出た理由を尋ねたとき、こんな言葉がありました。
「ママチャリで日本一周って、挑戦としては面白いかなと思って」
そして今、
「しんどかったけど後悔はない。この先、何でも乗り越えられる気がします」
そう話す表情を見ていると、飄々としていながらも、REXさんは間違いなく“チャレンジャー”なのだと感じました。
ゴールまで、どうぞお気をつけて。
